「前にも言ったけど、結城さんと一緒に居る時間は、僕にとってのかけがえのないものなんだ」
村雨くんとの距離がグッと近くなって、鼓動が一気に速まる。
「こうやって一緒に居られる時間が、もっとずっと続けばいいのにね」
その声はとても寂しそうで、悲しそうで、切ない。
「ごめん、少しだけ……少しだけ、そばに来て」
手と手が離れ、その代わりに私は、村雨くんに抱き締められていた。
「村雨くん……?」
どうして私を……でも、嫌な感じはしない……。
「ごめん」
その言葉と共に、体が離れる。
「部屋に戻ろう」
「あ、うん……」
……その後、私たちに会話はなかった。
暗室に戻ったら、村雨くんはまた小説を読み、私は青山や犬飼くんと一緒にテスト勉強。
……村雨くんは、どうして私を抱き締めたんだろう?
少しだけ震えていた村雨くん。 何も言わない村雨くん……。
彼は私のことを、どう思ってるんだろう?
……私たちって、ただの友達だよね。
ううん、私は「なんでも話せる友達」だって思ってる。
誰よりも近くで、色々な話を聞いてくれる大切な友達……その人が私を抱き締める理由は、何?
村雨くんは、もしかして私のことを……?



