ある日モテ期がやってきた!!~愛されすぎてどうしよう~



と、その時。 握っていた携帯が明るい音楽を奏でる。

画面に表示されたのは、【 鈴木さん 】の名前。
……つまり、犬飼くん。


「もしもし?」

『こんばんは。 今、大丈夫?』


いつも明るい犬飼くんの声が、今日はなんだか寂しそう。


「どうかしたの?」

『んー……ちょっと気になったんだけどさ、奈央ちゃんと青山って、マジで付き合い始めた?』

「へっ……」


ドキ……と胸が鳴る。

青山と私って……今はどういう関係なんだろう?


『まだ、付き合ってるフリ? それとも、それ以上の関係?』

「あ、えっと……付き合ってるフリだと思うけど……でも私、青山のことが好きかもしれない……」


自分の気持ちを話すと、犬飼くんは『そっか』と笑って、言葉を続けていく。


『俺ね、奈央ちゃんのことが好き。
でも、奈央ちゃんが決めたことに口出ししたり、邪魔したりはしない。
遠くから奈央ちゃんを見てることにした』

「え……」

『奈央ちゃんが決めたことが1番で、俺は奈央ちゃんが幸せならそれでいい』


ドキン


“ユウが決めたことが1番だろ? 俺は、ユウが幸せならそれでいい。”


犬太郎と同じ言葉。
なんで犬飼くんが、その言葉を……。


『メールじゃなくて、俺の声でそれを伝えたかった』

「犬飼く……」

『じゃ、伝えたからもう切るね。 おやすみ』

「あ……」


口を挟む隙もなく、電話は切れてしまう。

……どういうこと?

なんで犬飼くんは、犬太郎と同じ言葉を?
それに、『メールじゃなくて、俺の声で』って……それってまるで、犬飼くんが犬太郎みたいじゃん……。