「あなたが犬太郎なの?」って聞ければ話は早いんだけど、そう簡単に聞けてたら、こんなに悩んでないってね……。
ブー ブー ブー
あれ? メールだ。
「あっ……」
それは、まさかまさかの人物からのメールだった。
【 ごめん、どうしても外せない用が出来て、今日は行けそうにない。
俺が会いたいって言ったくせに、会いに行けなくてごめん。 】
……犬太郎からの、メール。
近くに居る青山も犬飼くんも村雨くんも、携帯には触っていないのに、それでも犬太郎からメールが来た。
じゃあ犬太郎は、私の知らない人?
この3人の中に居るんじゃなくて、まったくの別人ってこと……?
「結城? どうかしたのか?」
「あ……ううん!! なんでもない!!」
犬太郎は、ここには居ない。
そっか。 3人の中には居なかったんだ。
よかったような、残念なような……なんとも不思議な気持ちのまま、私は青山たちと夕日を眺め続けた。



