「村雨くん……」
フィルムカメラを構え、夕日が沈む海を撮っている。
その姿が凄く様になっていて、凄く、カッコイイ……。
「……犬飼くん。と、結城さん……」
私の声に気付いた村雨くんは、苦笑気味に笑いながら近くに寄ってきた。
犬飼くんだけじゃなくて、村雨くんも一人で屋上に居る。
そして、「彼」もまた一人で現れた。
「結城? なんでここに……って、犬飼と一緒かよ」
「青山……どうしてここに……?」
「そりゃあ、人と会うために来たんだけど……。
つーかお前、犬飼とここで会う約束してたわけ?」
「あ、ううんっ!! 犬飼くんとは、たまたま会ったんだよ……!!」
「……まぁ、犬飼は神出鬼没だからな。
待ち合わせして会ったわけじゃないならいいや。
せっかく屋上で再会したんだし、一緒に夕日見るか」
「う、うん……」
青山は、「誰か」と会うために屋上に来たんだ。
もしかしてその「誰か」って、「ユウ」のこと……?
……まさかね。
もし青山が犬太郎だったら、きっともっとちゃんと話すはずだもん。
それがないってことは、青山は犬太郎じゃない。と思うけど……。
……犬飼くんと一緒に居た私を「ユウ」だって思ってなくて、気付いてないかもしれない。
うん、馬鹿青山ならあり得るかも……。
「……ねぇ青山。もう、約束してた人と会ったの?」
恐る恐る、聞いてみる。
「あー……会えなかった。 だからもう終わり。待つのはやめた」
……やっぱり青山が犬太郎で、私に気付いてないのかも!?



