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それから私と青山は、二人であちこちを見て回ることにした。
昨日行かなかったお店でリンゴ飴を買って食べたり、迷路に入ってとことん迷ったり、お化け屋敷に入って二人で絶叫したり。
村雨くんの寂しそうな後ろ姿は気になっていたけれど、それでも私たちはとても楽しい時間を過ごしていた。
そして、夕方4時30分。
“学園祭2日目、夕方5時に屋上の入り口前で待ってる。”
犬太郎が言った時間まで、あと30分。
彼に会うかどうかを、私はまだ迷っていた。
……青山のことが好き。
そう感じていても、心のどこかではまだ犬太郎のことを考えてしまう。
どうしよう。
時間が経つにつれて、私はまた迷い出した。
青山と一緒に居るのが楽しいって気付いたのに、それでも私はまだ、優柔不断……。
何度も何度も時計を見て、何度も何度もため息をつく。
「さっきから何ため息ついてるんだよ?」
隣に居る青山が不思議そうに私を見る。
「色々、悩み事があるんだよ」
「あ、昨日啓介が言ってた“あの件”ってやつ?
結局、それってなんなの?」
「……秘密」
「ちぇっ。やっぱり秘密か。
まぁいいや、話したくなったらそのうち言えよ?
で、悪いんだけど、俺これからちょっと用事があるんだ。
だから先に暗室戻っといて」
「え? あ、そうなんだ?」
「おう、大事な大事な約束なんだ。 じゃ、またな!!」
そう言って、青山はピューッと廊下を駆けていった。
だから一人で暗室に行ったんだけど……。
「……誰も居ない」
鍵は開いてるのに、村雨くんは居ない。



