「ねぇ青山。 あの部屋、いつも3人で使ってるの?」
「え? あぁ、うん。
1年の時に、啓介が“写真現像に使いたい”って申し出たらすんなり鍵くれた。
実際あいつは、今でも時々一人でこもって現像してるよ。
で、俺と犬飼はそれに便乗して使ってる。 お前も好きに使えよ。 啓介に言えばいつでも入れるから」
「あ、うん!!」
そっかぁ。 写真部は今はもうないけど、村雨くんは現像をやったりしてるんだ。
凄いなぁ……。
「携帯とかデジカメで楽に出来る時代なのに、村雨くんって凄いね」
「うん、あいつは凄い。 昔から、本当に凄い」
遠くを見る青山はそのあとに小さなため息をついた。
……なんか、さっきから青山の様子が変だ。
何かを言いかけてやめたり、遠くを見てぼんやりしてるなんて、青山らしくない。
「青山、どうかしたの?」
「は? あ……いや、俺はいつも通り元気。 大丈夫だよ、心配すんな」
……ならいいんだけど、でも、やっぱりなんか違う。
「結城」
「え?」
薄暗い道で、青山が手を掴む。
引き寄せられて、そして……唇と唇が、触れる。
「ごめん」
離れた青山は、私を残して走って行ってしまった。
私、青山に……青山に、キスされちゃったんだ……。
ほんの一瞬触れただけなのに、いつまでもいつまでもその感触が唇に残ってる。



