「それって、彼氏さんのことだけじゃなくて、渉たちのことも好きってこと?」
「……うん、多分そう」
犬太郎のことは、好き。
好きじゃなきゃ、あんなに毎日メールが続くわけないもん。
でも……会うのが怖い。
だからいつも近くに居る青山のことや、いつもメールや電話をする犬飼くんのことを意識してしまう。
「……あのね、私、本当は彼氏と会ったことがないの」
もう、一人じゃどうすればいいかわからない。
村雨くんなら、何かアドバイスをくれる……。 そう感じた。
「村雨くんは、ネット恋愛って知ってる?」
「……いえ」
「あのね、“ゲームだよ”って彼は言ってた。
確かにその通りで、メールだけのやり取りで、実際は会ったりしない。
でも、彼は会いたいって言ってきた。 私もね、本当は会いたいって思った。
だけど、凄く怖い……。 彼と会ってしまったら、全部が壊れちゃう。
彼と一緒に過ごしてきた楽しい時間も、これからのやり取りも、きっと全部なくなってしまう……それが怖いの」
今のままでもいい。と、犬太郎は言ってくれたけど……本当にそれでいいのか、わからなくなった。
「青山や犬飼くんと話してると、凄く楽しい。
そして、メールの中の彼との時間も本当に大切で……私は、楽しい今の時間すべてを、失いたくないの……」
ただのワガママで、自己中心的な考え。
誰かを選ぶなんて出来ない。
私は、みんなのことが好き。
だから、どうすればいいのかがわからない……。
「……ごめん。 少し、整理する時間が欲しい」
私の話を聞いていた村雨くんが、静かに目を伏せた。



