………
……
…
あれ……私、どうしたんだっけ……。
「気がついたか」
「……青山?」
「お前、気ぃ失ってたんだよ。 もう平気?」
あ、そっか……。
私、犬飼くんと二人きりになって、それで気を失って……って、あれ? 犬飼くんが居ない。
「青山、犬飼くんは?」
「ちょっと外してもらった。
つーか、あいつメチャクチャ後悔しててヘコんでるから、啓介が外で慰めてる」
「でも、外に出たら女の子たちが……」
「さすがに男子トイレは大丈夫だろ。 ま、見つかったら見つかっただよ」
「……そっか」
微笑みを浮かべる青山に私も微笑み返し、ため息と共に、テーブルに突っ伏す。
「なんか食うか?」
「んー……まだ要らない」
「そっか」
テーブルの上にはいくつかの食べ物があるけど、まだ頭がクラクラするからとても食べられそうにない。
とりあえず、飲み物だけを貰うことにした。
「……犬飼の馬鹿、だから何もするなって言ったのに」
青山は少し怒ったような顔でたこ焼きをつまむ。
「お前もお前だぞ? 気ぃつけろよ馬鹿」
「ご、ごめんっ」
「あーもうムカつく!! 俺も抱き締めたいし、結城に触りたい!!」
「え……?」
青山の手が、私の髪に触れる。
「なんであいつはよくて、俺はダメなんだよ」
ドキン
少し寂しそうな目と、今にも消えてしまいそうな声に胸がギューッと締め付けられる。
「青山……」
「……わりぃ。 何もしないって約束なのに、髪、触っちまった」
苦笑気味に笑った青山は、ふっと息を吐いてから立ち上がった。
「あいつら呼んでくるから、ちょっと待っとけ」
「……うん」
「じゃあな」
バタン、と閉まるドア。
一人きりの部屋で、小さなため息をついた後にペットボトルのお茶を口に含む。
犬飼くんと、どんな顔で会えばいいんだろう?
今まで通りのやり取りをするなんて、無理かも……。
ドキドキしながらみんなの帰りを待つ。 と、そこに戻ってきたのは、一人だけだった。



