犬飼くんと、二人きり……。
「やっと二人きりになれたね」
「あ……はい……」
これまでと比べものにならないくらいの緊張。
窓の無い部屋で、換気扇が回る音だけが響く。
「隣においで」
凄く優しい笑顔で、立ったままの私を隣に来るよう促す犬飼くん。
彼の瞳を見つめながら隣に座ると……、
「さっきの青山の言葉だけど、“絶対何もするな”って言われると、したくなっちゃうよね」
犬飼くんの手が、私の頬に触れた。
「い、犬飼くんっ……」
「結城ちゃん。 ううん、奈央ちゃん。
俺はね、本当に奈央ちゃんのことが好きなんだ。
だからずっと、ずっとずっと二人で話がしたかった」
手が、ゆっくりと動き……私の唇に触れる。
「奈央ちゃんに、もっと触れたい」
手が離れ、犬飼くんはそのまま自分の唇を触った。
「間接キス、だね」
こ、こんなの……もう、ダメ……。
胸が苦しくて、ドキドキが半端なくて、もう私、死んじゃうかもしれない……。
「ちょっ、奈央ちゃん!? 大丈夫……!?」
「もう、ダメぇ……」
目の前が、真っ暗になる……。
…
……
………



