不安を抱えながら、教室に入る。

青山が説明すると、女の子たちは、なんとなくだけど納得したみたい。

元々私と青山はよく話していたし、みんな「二人は付き合っているかも」と薄々感じていたらしい……。
毎日、ただ言い合いをしてるだけなんだけどね……。


そして私に対する犬飼くんの行動は、犬飼くん自身がみんなに話した。


「青山と結城ちゃんをちょっとからかっただけだよー。
あれ? もしかしてみんな、俺と結城ちゃんをくっつけたいわけ?
じゃ、ほんとに付き合っちゃう?」


ものすっごくいい笑顔……。
まさに、スマイル!! って感じ。 ……上手く説明出来ないけど。

偽りのない笑顔。
みんなにはそう見えるから、そこでようやく話が終結した。


数人の女の子はまだ少し疑っていたけれど、犬飼くんに話しかけられて上機嫌に……。

青山と同じくらい、その子たちも単純かも……と思ったけど、黙っておくことにした。


そのすぐあと、チャイムの音が鳴るのとほとんど同時に先生が来て、朝のホームルームが始まる。


そしてその時、ポケットに入れていた携帯が微かに振動し、メール着信を知らせた。

メールの送り主は、【 鈴木さん 】。


……でもそれは、周りにバレないようにと登録した、犬飼くんの名前だ。


【 女の子って怖いね。 】


え、今更気付いた?

……まぁ、みんな犬飼くんの前だと気持ち悪いくらい猫かぶりだから仕方ないか……。

どう返そうか困っていたら、すぐにもう1通メールが届いた。


【 結城ちゃんは裏表が無いから好き。 】


……裏表、か。


【 みんな誰だって裏表があると思う。
私も……犬飼くんが思ってるような人間じゃないよ、きっと。 】


私だって、犬飼くんと話してる時以外の別の顔を持ってる。

学校に居る時の「結城 奈央」と、犬太郎と話してる時の「ユウ」は、まったく別の人間だもん……。

裏表、あるよ。