「あのさ、青山。 これって、どういうこと?」


全然意味がわかんない。 何がどうなってんの……?


「犬飼と話し合った」

「犬飼くんと?」

「そ。 で、俺はお前の“彼氏のフリ”をする」


……彼氏のフリ!?

いやいやいやっ、て言うかまず、私抜きでそんな話をしてるなんておかしくない!?


「あ、あのねぇどうして勝手に決めてるの?
私、何も聞いてないよ?」

「さっき決めたから今言った」


……この、単純馬鹿……。


「怒るな怒るな、まず聞け。
俺がお前の彼氏なら、犬飼のこととか面倒にならないだろ?」

「あ、そうか……で、でも、だからって青山が彼氏? 私、あんたのこと嫌いだよ?」

「俺は結城が好きだから問題ない」


えー……何その自分勝手な考え……問題ありすぎだよ……。


「……でも、青山が彼氏で、犬飼くんが何も話しかけてこなければ……女の子たちは静かになるかも」

「だろ? だから俺と付き合え」

「だ、だけど私、彼氏居るよっ?」

「いいんだって、“彼氏のフリ”なんだから。
それにお前の彼氏、この学校じゃないんだろ?
同じ学校ならメールだけじゃなくて会いに来たりする。
それがないってことは、彼氏はここに居ない。 だから学校内では俺が彼氏役になるよ」


……犬太郎は同じ学校だけど、顔は知らないし、会うこともない。

だから、青山の考えに従うことが正解かもしれない……。


「あのさ……体に触ったりしない?」

「えっ? あー……わかんねぇ。 手ぇ繋いだりはするかも」

「……わかった、それくらいなら我慢する」


少し辛抱すれば、また静かな生活になる……はず。

だから青山を「彼氏」として迎え入れることにした。 偽物彼氏だけどね。


「よっしゃ、それじゃあ女子たちに説明してこようぜ」

「うん」


私たちのついた、嘘。
これを信じて、みんな収まってくれればいいけど……。