「あの、犬飼くん? 今のって……」
『あっ……ごめん、違うんだ。 何言ってんだろう。ほんと、ごめんっ!!』
「ど、どういうこと……?」
電話の向こうで、ウンウン唸る犬飼くん。
そして、静かに話し出す。
『……俺の本音。“2番目でもいいから結城ちゃんのそばに居られたらいいのに。”って思ってたのを、つい言っちゃったんだ。
そんなことしちゃダメなのはわかってる。 なのに言っちゃったんだ……ほんと、ごめん』
どこか、泣きそうな声。
どうしよう。 なんて声かければいいだろう……。
「あの……あの、ですね。
彼女にはなれないけど……メールくらいなら、いつでも、時間がある時なら出来るんで……」
『ほんと!?』
「う、うん……」
『ありがとう!!』
すっごく嬉しそうな声。
それを聞きながらも、私はすでに後悔し始めていた。
なんで私、自分で危ない橋を選んじゃったんだろう……。
もしメールしてるのが女の子たちにバレたら、私の人生が終わるのに……。
「あ、あのっ……その代わり、女の子たちの前で直接話したりするのは無しでお願いします……。
あと、私とやり取りしてることは、誰にも言わないでください」
『うん、わかった。 普段はメールだけだね。
電話もダメ? 時々こうやって話せたら、俺としては凄く嬉しいんだけど』
「あー……それは、まだわかんない……」
『そっか』
犬飼くんの寂しそうな声に、ちょっとだけ胸が痛む。
だけど犬飼くんはすぐにいつもみたいな明るい声になって、電話の向こうで微笑んだ。
『俺はいつでも待ってるよ。
だから、何かあったらいつでも連絡してね』
甘くささやくような声。
犬飼くんの声って、なんだか凄く落ち着く……。
ずっとこのまま話していたい。 そんな風に思ったけど、犬飼くんは『じゃあまた明日!!』と言って電話を切ってしまった。
「……また明日」
もう繋がってない電話にそう呟いて、携帯をゆっくりと閉じた。



