「渉、話してるとこ悪いけど……そろそろ移動しない?」
その声で、村雨くんが一緒だったのを思い出す。
「声は聞こえてないと思うけど、さっきから、かなり見られてる」
「あー……うん、移動しよう」
村雨くんの指差す先に、犬飼くんと女の子たち。
ファミレスの中から、みんながジーッと私たちを見てる。
うん、確かにこれは、移動した方がいいかも……。
「メチャクチャ睨まれてる。女ってこえぇー」
けらけら笑いながら歩き出す青山を、私と村雨くんも追う。
その時、チラリとファミレスの中を見たら…――犬飼くんと目が合った。
犬飼くんは携帯をトントンっと指で叩き、それを耳元にやって微笑む。
多分、「連絡待ってる」って私に言ったんだと思う。
……他の人は気付いていなかったその仕草に、私の心臓は、ドキドキと大きな音を立て始めた。



