「奈央、おいで」


優しい顔で私を呼んだ啓介くんが、そっと手を差し出す。


「……名前を呼ぶのは、3年に1回じゃなかった?」


ドキドキと心臓が鳴る中で、おどけたようにそう言ってみる。


「数ヶ月に1回に昇格した」


なんでもないような顔で言った啓介くんは、それからふっと笑う。


「もぉー……いつか絶対、毎日呼んでもらうようにするからね!!」


その言葉と共に、差し出された手に自分の手を重ねた。




私は今、最高に幸せな時間を過ごしている。

その時間がこれからもずっと続いていくことを願いながら、笑顔のまま街を歩き続けた。






END.