暗室から離れて、廊下の端に行く。
近くに居るのが怖い……二人のやり取りを知るのが、怖い……。
誰も通らない廊下から窓の外に目をやり、すっかり暗くなった空を見上げる。
さっきまで、屋上であんなに幸せな気持ちだったのに……なのに今は、不安と恐怖だけが頭の中をグルグルと回っている。
あんな啓介くんや犬飼くんは、見たことがなかった。
あの狭い暗室で、二人は今、どんなやり取りをしてるだろう……?
二人の声も音も聞こえない廊下で、ただジッと待つ。と……。
「あっ……」
荷物を抱えた啓介くんが、チラリと私を見たあと……ゆっくりと近づいてきた。
「ごめん、今日は先に帰るよ。
さっきのこと、僕の方はもう終わったから、だから今度は結城さんが良太郎と話してきて」
視線を合わせることなく、うつむきながら私の横を抜けていく啓介くん。
「……啓介くんっ」
その腕を思わず掴んでしまったけれど、啓介くんは何も言うことなく、それをスルリと解いて行ってしまった……。



