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テンポよく階段をかけあがり、学校の1番てっぺんにある重たいドアを開く。
「わぁっ……やっぱり凄いね」
夕焼けにはまだ早いけど、それでも屋上から見える景色は最高で、まるで宝物のように、海がキラキラと輝いている。
風は冷たいけど、でもすっごく気持ちいい。
「実は、コレのためにここに来たんだ」
そう言って、啓介くんが紙袋から取り出したのは……学園祭の時に使っていたのと同じフィルムカメラ。
「ここからの景色を、どうしても撮りたくなったんだ」
「そうだったんだぁ。 でも、普段は絶対に入れないのに、よく先生が許してくれたねー」
「あ、それは多分、僕って信用されてるから」
「なるほど、さすが学年1優秀な生徒!! まぁ、そうじゃなきゃ暗室も自由には使えないもんね」
私の言葉に啓介くんはニコッと笑って応え、それからカメラを構えて海の方へと向ける。
啓介くんの真剣な横顔……やっぱりカッコイイ。
普段はあまり見ることの出来ないその姿に、自然と鼓動が速まっていく。
学園祭の時は他にたくさんの人が居たし、犬飼くんや青山と話し始めたから……写真を撮ってる啓介くんを、こうやってじっくり見るのは初めてだ。
海の方にカメラを向けて、何度も何度もシャッターを切る啓介くん。
ファインダーを覗き込むその姿に、迷いはまったくない。
……啓介くんって、本当に凄い。
写真を撮る姿勢、真っ直ぐな視線、シャッターを切る指先、風に揺れる髪……。
すべてが綺麗すぎて、もう、「凄い」としか言いようがない。



