「お前さ、誰か別の奴を誘えば?」
青山の言葉で、場の空気が少し緩くなる。
「んー……じゃあ俺と一緒に行ってくれる人ー?」
と募集をかけたら、当然すぐに犬飼くんの周りには人が集まる。
それを合図に、青山が私の手を引いて歩き出した。
その後ろからは、初めからクレープ屋さんに行く予定だったカップルたちも来る。
「犬飼のことは放っとけ。 大丈夫か?」
「う、うん……」
男の子に、初めて手を握られた。
いつもウザいだけの青山が、なんだか今は男らしく見える。
「犬飼ってさ、姉二人に妹一人が居るから、女が周りに居るのが普通らしいんだ」
「そうなんだ……」
だから女子に囲まれても全然平気だし、キスしちゃいそうなくらい近くに顔を寄せるのも平気なのかな?
「でも、あいつがお前みたいなのにわざわざ近づくなんて珍しいな」
「……“お前みたいな”って何よ? そう言うあんたは、いっつも私に話しかけてくるじゃん」
「あ、そうか。 俺もお前と話してたな。すっかり忘れてた」
「……この、馬鹿青山っ!!」
ゲラゲラと笑う青山に、いつも感じてるイライラの限界が来てしまった。
握られていた手をバッと離し、持っていたカバンを思いっきり青山にぶつける。



