ある日モテ期がやってきた!!~愛されすぎてどうしよう~



村雨くんと、二人きり。

だけど緊張はなくて、ただただ、「村雨くんのそばに居たい」と感じた。


だからゆっくりとベッドに近づいて、毛布を握っている村雨くんの手に自分の手を重ねた。


言葉はなく、村雨くんが何を思っているかもわからない。

だけどそれでも、村雨くんを近くに感じていることが出来る。
それだけでいい。 それだけで、とても温かな気持ちになった。






「……ユウ」


ふと、村雨くんが私を呼ぶ。


「……犬太郎は、顔も本名も知らないユウに恋をした。
だけど“ゲームだ”と言ったのは犬太郎本人。 そして、犬太郎は偽りの中でユウを見つめ続けていた。

メールするのは楽しい。 だけどユウが本気じゃないことには、ずっと前から気付いてた」


村雨くんがゆっくりと体を起こし、そして、真っ直ぐに私を見つめた。




「“会いたい”と言った時、ユウの気持ちを本気にしたかった。
俺だけを見てもらいたいって思ったんだ。 ……だけどユウのそばには渉や良太郎が居た。
“俺”の入る隙間なんてなくて、ツラくて苦しくて、そして後悔もした。

出会った日に戻ってやり直したい。 何度そう思ったかわからないけれど、でも、過去には戻れない。
戻れないなら進むしかないだろう?
“俺”が選ばれることは絶対にないだろうけど、それでも、ユウのそばに居られるのなら幸せだと思っていた」


寂しそうな、ツラそうな、悲しそうな顔。

そんな村雨くんの手が、私の頬を撫でた。




「ユウは……いや、結城さんは、今も本気にはなれない?
犬太郎である僕を、村雨 啓介としての僕を、本気で想うことは出来ませんか?」