犬太郎との出会いや、彼と過ごしてきた時間……そして、青山や犬飼くん、村雨くんと過ごしてきた時間……。
色々なものを思い出しながら言葉を繋げているうちに、涙がポロリとこぼれ落ちた。
胸の奥が痛くて苦しくて、切なくて。
どう言葉を繋げていけばいいかわからなくて、涙だけが溢れ続ける。
「奈央ちゃん」
ベッドから下りてきた犬飼くんが、私の体を優しく抱き締める。
「話してくれてありがとう」
髪を撫でる優しい手と、柔らかなささやき声。
犬飼くんに抱き締められて、心は凄く凄く落ち着くけれど、そんな状態なのに私は、村雨くんを見つめていた。
ベッドの奥に横になって向こう側を向いている村雨くんは、ギュッと毛布を握り締めている。
彼は今、私をどう思ってるだろう?
犬太郎への想いや、みんなへの想いを言った私を、どう思ってる……?
「啓介」
犬飼くんが、私の体を離して村雨くんを見た。
「俺、外行ってるからさ、奈央ちゃんと二人で話しな?」
犬飼くんは私の頭をポンポンと叩いたあと、村雨くんに近づいて……向こうを向いたままの村雨くんの髪の毛を、グシャグシャッとしてから笑った。
「色々なことを、ちゃんと話した方がいい。
そうすればきっと、答えは見つかるよ」
そう言った犬飼くんは、ひらひらと手を振りながら部屋を出ていった。



