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部屋に戻った時、小百合ちゃんの携帯に青山から連絡があった。
それは、『帰ったはいいけど、暇だからどっか遊びに行くか』というデートのお誘い。
小百合ちゃんはかなりビックリしてて、みんなの顔を何度も何度も見回していた。
「いいんですか……?」と不安そうに言ってきたけど、「青山の誘いにちゃんと応えなきゃ!!」と背中を押して、小百合ちゃんを送り出す。
「ありがとうございます!!」
何度も何度も頭を下げて、嬉しそうに笑う小百合ちゃん。
それを見ていたら、なんだか私も嬉しくなって、「頑張って!!」と声をかけていた。
小百合ちゃんが出ていったあと、部屋に残っているのは……部屋の主である犬飼くんと、その幼なじみの村雨くん。 そして、私。
村雨くんは持参していたらしい小説を読んでいて、犬飼くんはベッドの上で携帯をいじってる。
私はというと、そんな二人の間くらいの場所で壁に寄りかかり、携帯を開いていた。
……開いてはいるけど、とくに何もしていない。
ブログ更新は最近してないし、書くようなこともない。
他にすることも思いつかなくて、「何かやってる」のを装うため、携帯を開いていた。
……静かだなぁ。
でも二人は全然気にしてないみたいだから、いつもこうなのかな?
犬飼くんと村雨くんの、当たり前の光景の中に私が居る。 なんだかちょっと変な気分。
「ねぇ奈央ちゃーん」
「あっ、な、何っ?」
急に名前を呼ばれて、体がビクッと反応する。
それを見た犬飼くんは、体全体をこちら側に向けながらどこか楽しそうに笑った。
「ずっと気になってたんだけどさ、奈央ちゃんって、犬太郎のどこが好きなの?」
ドキン
二人に聞こえてしまったんじゃないかと思うような大きな音を立てて、心臓が鳴る。



