ある日モテ期がやってきた!!~愛されすぎてどうしよう~



「さ、さゆは渉が好きなんだろっ?
なら、渉の気持ち聞けてよかったじゃん? ね、だからもうやめてー……」

「よくない!! て言うかそれ、私と渉さんをくっつけて自分は奈央さんとって考えでしょ!!
そこまでして奈央さんと一緒になりたいわけ!? この卑怯者!!」

「違うってー……俺はさゆのことを思って……」

「私のことを思うのなら、余計なことはしないでください!!」


うわぁ……小百合ちゃん、かなり怒ってる。

叩かれ続けてる犬飼くんは、すっかり縮こまってしまった。


「啓介、いい加減助けてよー……」

「自業自得」

「薄情者ぉ……」


犬飼くんは涙声だけど、村雨くんは平然と缶コーヒーを飲んでる。


「さ、小百合ちゃん、少し落ち着いて……?」


仕方なく私が二人の間に入って、小百合ちゃんの体を押さえる。


「犬飼くん、どうして急にあんなことを青山に聞いたの?
あんな風に突然言われたら、小百合ちゃんじゃなくても怒るよ?」


体をさする犬飼くんは、少し考えたあと……にっこり笑って答えた。


「渉の気持ちが揺れてる。 だから聞いたんだよ。
それに、ライバルは減らした方が得だしね?」

「ちょっ……お兄ちゃん!! やっぱり自分のためじゃんっ!!」

「だってー、俺幸せになりたいしー?」

「もう、馬鹿っ!!」


また言い合いを始める犬飼くんと小百合ちゃんを横目に、村雨くんが息を吐く。


「……確かに、渉は揺れてる」


小さくて真っ直ぐな声が、私だけに届く。