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その後、帰りのホームルームと清掃を終え、私は帰り支度を進めていた。
犬太郎からのメールはない。
向こうも私と同じように動いてるはずだから、今は帰り支度の途中かな?
「おーい、結城ー!!」
と、そこにやって来たのは、いつも騒がしい青山 渉。
何かを企んでるようなニコニコ笑顔に、げんなりとなる……。
「みんなでクレープ食べに行くんだけど、一緒に行かない!?
頼む!! 女子が一人足りないんだ!!」
青山の後ろに視線をやると、クラスメートたちがわいわい楽しそうに話してる。
よく見ればみんな恋人同士で、青山だけが独り者だ。
「一人で寂し〜く食べれば?」
「ダメダメ!! カップルだと全品半額フェアなんだから、お前が居なきゃ俺だけ損じゃん!!」
「えー……じゃあ他の人を誘えばいいじゃん」
「お前の分は俺が奢ってやるから、頼む!! どうしてもチョコバナナが食いたいんだ!!」
まるで、神様にお願いをするように手を合わせる青山。
まぁ……奢ってくれるのなら、一緒に行ってもいいかも?
「1番高いの頼んでもいいの?」
「よっしゃ来い!! チョコバナナのためだったらなんでもするぜ!!」
あはは、単純馬鹿。
でもなんか、青山らしくていいかも。
沈んでた気分が、青山の馬鹿元気のおかげでちょっとだけ回復した感じ。
「待ってろよー、俺のチョコバナナ!!」
そんな言葉に笑いながら、みんなと教室を出ようとした時……――、
「ねぇそれ、俺も行っていい?」
騒がしい教室内に通る、綺麗な声。
風は吹いていないのに、「彼」のところから教室全体に、爽やかな風が流れたような気がした。



