……ここが、村雨くんの部屋。
大きな本棚、勉強机、ベッド。 犬飼くんの部屋もシンプルだけど、村雨くんの部屋もかなりシンプルだ。
本棚も机の上も全部綺麗に片付けられているから、余計シンプルに思うのかもしれない。
「……凄いなぁ」
本棚の中は、参考書がいっぱい。 あとは分厚い辞書数冊に、大学入試の過去問題集。
見事なまでの勉強部屋だ。
こんなに勉強してる人だからこそ、学年1位の成績が取れるんだろうな……と、漠然と思った。
そのままぼんやりと部屋の中を見ながら、コーヒーとクッキーの乗ったお盆を机の上に置く。
イスに座って本棚を見て、「凄いなぁ」というため息を何度もつく。
ほんと、私の部屋とは大違い。
無駄な物なんて何1つない村雨くんの部屋を見つめ、それから温かいコーヒーを口に運ぶ。
「……美味しい」
ミルクと砂糖の入ったコーヒーは、甘さがちょうどよくて凄く美味しい。
シャワーで体を温めて、コーヒーで心を温めた感じ。
心も体も、とても落ち着く。
……だけど、村雨くんが戻ってきたあとのことを考えると、やっぱり不安になる。
あんなメールのやり取りをして、会いたくなかった時に会って、キスされて、お家に連れてこられて……。
そして、シャワーに行った村雨くんが戻ってきた時、どんな話をすればいいんだろう?
私……「村雨くんと話すことなんてない」って言っちゃったんだよね。
なのに村雨くんは、私を……。
“僕は、結城さんが好きだから……だからこのまま放っておくなんて出来ないよ。”
ドキ ドキ ドキ....
キスした時の言葉が、頭の中によみがえる。



