ジッと私を見て、それから頬を撫でる。
「体が冷えてきてる。 このままじゃ風邪引くよ」
「そんなの、村雨くんに関係ない……」
「関係あるよ」
グッと手を引かれ、村雨くんの顔がすぐ目の前に……。
「僕は、結城さんが好きだから……だからこのまま放っておくなんて出来ないよ」
すぐ近くで視線がぶつかり、そして……雨に濡れた唇と唇が重なる。
「……一緒に来て欲しい。 結城さんと話がしたい」
耳元で聞こえた声に、私は返事が出来なかった。
だけど村雨くんは、そのまま私の手を引いて歩き出す。
二人とも無言のまま、びしょ濡れのまま歩き続け……見覚えのある建物へとやって来た。
ここは、村雨くんのお家。
前に来た時は二人きりだったけど……。
「母さん、タオル持ってきて」
と玄関で声をかける村雨くん。
今日は村雨くんのお母さんが居るらしい……。



