「い、犬飼くんっ……!?」
「やっぱり一緒に入ってて」
「で、でもっ……!!」
「お願い。 奈央ちゃんを、感じていたいんだ」
抱き寄せられ、体の自由が奪われる。
絡められた足、抱き寄せる腕、髪の毛をくすぐる呼吸……頭がボーッとして、もう、何がなんだかわからないっ……。
「奈央ちゃんがそばに居ると、心が安らぐ。 ごめんね、このまま眠らせて」
「あっ……」
犬飼くんの体から、段々と力が抜けていく。
そして……犬飼くんは私を抱き締めたまま眠ってしまった。
……人が眠りにつく瞬間を、初めて見た。
苦しそうに呼吸する犬飼くんの腕を押して離れて、元の場所でふぅっと息を吐き出す。
布団に引き込まれた時はどうなるかと思ったけど……なんとか抜け出せてよかった。
「結城さん? 大丈夫?」
「あっ……だ、大丈夫……」
外に居た村雨くんが心配そうにドアを開く。
それから、眠ってしまった犬飼くんを見て小さく笑った。
「結城さん、髪の毛グチャグチャ」
「へっ!? わっ……ほんとだ!!」
髪の毛のことなんて、全然気にしてなかった。 それに、服も少し乱れてる……。
「良太郎は、結城さんに甘えているんだね」
ゆっくりと私に近づいた村雨くんは、私の髪を撫でながら微笑む。
何も話していなくても、全てを理解しているような顔……。
そして、髪の毛を撫でていた手が頬に移動する。
「良太郎のそばに結城さんが居てくれると、良太郎は弱い部分を隠したりしないのかも」
どこか寂しそうな声が、ためらうことなく続いていく。
「結城さんは今、誰と一緒に居たい? 誰を想ってる?」
優柔不断な私への、真っ直ぐな問いかけ……。



