……手が触れただけでこんなにドキドキするなんて、なんでだろう。
手を繋ぐことなんて今まで何度もあったのに、なんで今、こんなにドキドキしてるんだろう。
食器を洗いながらふぅっと小さなため息。
部屋の中の様子はわからないけれど、話し声がするから犬飼くんは起きているみたい。
犬飼くんと村雨くん、何を話してるのかな?
もしかして、私のことを話してたりして……。
それとも、青山や小百合ちゃんの話かな?
少しだけ気にしながらも、食器を洗い進めていく。
そしてそれが終わったあと、部屋に戻ると……犬飼くんがニコニコしながら手招きをした。
「布団入ってー」
「え……」
ほらほら、と布団を捲る。けど……、
「じょ、冗談でしょ……?」
「ううん、マジ」
……一緒の布団に入るなんて、本気で言ってるの……!?
「ね、ちょっとだけー」
「いやいやいや!! 無理です!!」
「えーなんもしないから」
「無理ですってば!!」
何もしないとしても、布団に入ること自体無理だよっ……!!
「む、村雨くんっ……!!」
助けを求めて村雨くんを見たら、困ったように笑いながら立ち上がった。
「外に居るから、何かあったら大声で呼んで? 良太郎が結城さんに何かしたら、僕が良太郎を殺す」
うわ……すっごい真剣な顔してる。
何かあったら、本当に実行しそう……。
「啓介、ありがとー」
「いいよ。 10分で戻る」
「うわ、短っ!! せめて1時間!!」
「無理、長すぎ」
「ケチー」
あははっと笑う二人。
なんかもう……「全部、夢?」ってくらい、非現実的なやり取り。
村雨くんは優しい顔で笑って出ていって、犬飼くんはニコニコと布団へ来るよう促す。
本当に、全部が夢のよう……。
「おいで」
……だけどベッドの中から私を呼ぶ犬飼くんは、紛れもなく本物…。
夢なんかじゃなくて、本物の犬飼くんが、私を呼んでいる……。



