……と言っても、包丁を握るのも鍋を火にかけるのも、全部小百合ちゃん。
手際のいい小百合ちゃんを後ろから眺めながら、私は静かに壁に寄りかかっていた。
そんな時、小百合ちゃんが振り返って私を見る。
「私、渉さんが奈央さんを好きなこと、知ってます。
それだけじゃなくて、お兄ちゃんや啓介さんのことも」
うわ……いきなり核心をついてきた。
「奈央さんは凄く大変だと思いますが……正直羨ましいです」
「へ? う、羨ましい……?」
「はい。 だって私、渉さんに妹みたいに扱われてるから。
渉さんに“好き”って想われている奈央さんが羨ましいです」
あ……確かに青山は、小百合ちゃんを妹みたいに見てた。
小百合ちゃんを見る瞳、頭を撫でる行動、言葉の感じも、全部「兄」としてのものかもしれない。
「……奈央さんがお兄ちゃんか啓介さんと付き合ってくれたら、私は渉さんにアタックしてるのに。 なんちゃって!!」
……冗談ぽく言ったけど、多分今のは小百合ちゃんの本心…。
私が居なければ、小百合ちゃんは青山にもっともっと近づいているはず。
私が居るから、小百合ちゃんは今の距離を保ってる……。



