「あ、あのっ……結城 奈央さん、ですよね?」
「あっ、うん」
犬飼くんが眠ってすぐ、妹さんと目が合う。
「挨拶が遅れてしまってごめんなさい。 私、犬飼 小百合です。
兄や、渉さんや啓介さんからいつも話を聞いていて、一度、お話してみたかったんです」
「あ、そうなんだ……」
私は小百合ちゃんのことを今さっき知ったばかりだったのに、3人は私のことを話していたらしい。
「聞いてくれよ結城。 こいつがお前に“会いたい”って言ってたからさ、“じゃあ会わせてやろう!!”って思って屋上で待ってたのに、こいつ俺との約束をすっぽかしやがったんだよ」
「へ?」
屋上での、約束?
「あの日はウチの学校でも学園祭だったから、“行けたら行く”ってメールしたじゃないですかー……」
「そのあと“やっぱり行けない”ってメールしてきたのは約束の時間のあとだろ?
ダメならダメで、もっと早く連絡してこいっつーの」
……学園祭。
あっ!! 青山が屋上で待ってたのって、小百合ちゃんだったんだ!?
そっかぁ……あの日、もし小百合ちゃんがウチの学校の学園祭に来ていたら、私と小百合ちゃんはあの日に会ってたんだ。
「ま、今日こうして顔合わせ出来たからいいけどな。
あ、来年は来いよ? 屋上からの夕日、マジですげーからお前にも見せてやりたい。
啓介の写真もいいけどさ、本物はやっぱりいいぞー? 小百合もウチの学校にすりゃあよかったのにな」
青山は、まるで自分の妹かのように小百合ちゃんの頭を撫でる。
「わ、私だって同じ学校がよかったですけどっ……高校になってまで兄妹で同じ学校って恥ずかしいじゃないですか!!」
「そうかぁ? 俺は全然気にしないけどな。 まぁ、妹なんて居ないけど」
いつものように笑う青山と、顔を赤くしながら視線を逸らす小百合ちゃん。
青山と話してる小百合ちゃんを見て、ふと、気が付いてしまった。
……小百合ちゃん、青山と話す時だけ凄く恥ずかしそうに顔を赤くして、目が潤んでる。
これって多分、あれだよね……。
……恋する女の子。



