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数分後、電話を終えた青山が廊下から戻ってくる。
村雨くんも電話を終えたあとだったけど、そのままドラッグストアへと買い物に出た。
「良太郎の姉ちゃんたちは来れないけど、今から妹が来るって」
「……お姉さんも妹さんも、外国へは行かなかったんだね」
「あぁ、その話聞いたんだ?
姉ちゃんたちはもう結婚してて、旦那さんと子供と幸せに暮らしてるよ。
で、妹はばあちゃん家に住んでる。 良太郎も初めはばあちゃん家に住む予定だったんだけど、学校までかなり遠いからやめたんだ。
姉ちゃん家から通うか?って話も出たんだけど、“迷惑かけたくないから”ってことで、ここに住み始めた」
……そうだったんだ。
犬飼くんは詳しいことを言わなかったけど、でも、色々なことがあったんだ。
「姉ちゃんや妹とはかなり仲が良いんだけど、でも、ツラいとか苦しいとかは言わない。
この馬鹿は、いつも笑顔で無理する奴なんだよ」
……ツラい部分を見せずに、学校でもいつもニコニコ笑ってる犬飼くん。
周りの人に心配や迷惑をかけたくないから、自分の中だけに溜め込んでしまう人なんだ……。
「ツラいならツラいって、言って欲しいよ……」
青山や村雨くん、そして私に言って欲しい。
犬飼くんが感じてること……ツラさや苦しさがあるなら、私たちに話して欲しい。
「無理しないで、私に話して……」
荒い呼吸のまま眠っている犬飼くんに言って、私はただただ、祈るように目を閉じた。



