「あれ? 開いてんじゃん。 あの馬鹿、鍵かけ忘れたのか?」
「いや、二人の靴がある」
「は? 水族館じゃなかったわけ?」
玄関の開く音と共に、聞き慣れた2つの声が響いてきた。
「……青山!! 村雨くん!! お願い、助けて!!」
力の限りの声を出した、1秒後。
「うぉ!? 何やってんだお前ら!!
良太郎てめー!! 俺の結城に何しやがる!!」
「……良太郎? どうした? 大丈夫?」
「……は? え?」
「渉、良太郎の体動かして、結城さんを頼むよ」
「お、おうっ……!!」
村雨くんの素早い判断と、青山の馬鹿力のおかげで、犬飼くんの下からなんとか抜け出すことが出来た。
「犬飼くんっ……!!」
意識を失ったままの犬飼くんは、ツラそうな顔で息をしている。
「どうしよう、犬飼くんが死んじゃうっ……」
「死ぬかよ馬鹿!! ただの風邪だろ!? ……多分だけど」
近くでオロオロする私と、不安そうな顔の青山。
お互いの手をギュッと握り締めながら、ベッドの犬飼くんを見つめ続ける。
「疲労の限界を越えたんだよ、きっと」
ただ一人冷静な村雨くんが、犬飼くんのおでこに手をあてながら呟いた。



