ある日モテ期がやってきた!!~愛されすぎてどうしよう~



………

……




夕方。

カラオケ屋を出て、青山と並んで歩く。


「ずっと部屋ん中に居たからわかんなかったけど、外はもう暗くなってきてたんだな。
急に夕方になった感じで変な気分。 竜宮城から戻ってきた浦島太郎って、こんな感じ?」

「あはは、そうかも」

「実はここは未来都市!! だったら面白いけど、いつも通りのコンビニに、いつも通りの駅!! つまんないなー」


そんなことを笑い合いながら、私たちは歩き続ける。


「このあとどうする? どっかでメシ食って帰る?」

「んー、でも今日はそろそろ帰った方がいいかも」

「そっか。 じゃあ送る。
しっかし、俺ばっかり歌ってたなぁ。 つまんなくなかった?」

「全然!! 色々聴いてて楽しかったよー。 青山の歌声、すっごく綺麗だった」

「あはは、ありがと」


明かりの灯った街で、手と手を繋ぐ。

青山の手は温かで優しくて力強くて、人混みの中でも迷うことなく私を導いてくれる。


「明日は良太郎と水族館だっけ?」

「うん」

「じゃあ俺、こっそりついて行こうかな」

「えー……」

「大丈夫、バレないように行く」


……バレないように。って、今言っちゃってるし。
それに、「ついて来る」なんて聞いたら青山のこと探しちゃうかも……。


「絶対邪魔しないから安心しろよ」

「……村雨くんがそう言うのなら信じられるけど、青山だからなぁ」

「うっわ、俺って信用なし?
じゃあ啓介も連れてく!! これなら安心だろ?」


……「安心」の意味が違うような気がするけど、それでも青山は私を見てニコニコと笑い続けた。