ある日モテ期がやってきた!!~愛されすぎてどうしよう~



………

……




その後、私が歌ったのは2、3曲。
どれも点数は低い。けど、青山は嫌な顔一つせずに聴いていてくれた。


「別に“下手!!”ってレベルじゃないじゃん。 凄く良い声してるから、羨ましいよ」

「……青山、それって私を馬鹿にしてる? 青山の声の方が綺麗だよ」

「いや、そんなことないけど……なーんか結城って、啓介と同じこと言うよなぁ。
俺、啓介の声好きだし歌い方も好きなのに、それを言うとあいつ怒るんだよ」


……そりゃあ、こんなに歌が上手い人に「好き」だの「羨ましい」だの言われても、嫌味にしか聞こえないもん。

きっと私や村雨くんだけじゃなくて、他の人だって同じことを思うはず。




「……結城と啓介って、似てるよなぁ」


確かめるように呟き、ふっと笑って私を見る。


「結城と啓介の出会いって、やっぱり運命なのかもしれないな。
何気ないことを書いてたブログに啓介がコメントして、それがきっかけでメル友になって、同じ学校の同じ学年だと知る。
犬太郎が誰なのかわからなかったのに、それなのにお前らは出会った。 凄いよな」

「……うん」


運命。


犬太郎と同じ学校だと知った時に、私が思った言葉。
それを今は青山が言っている。


「……マジで運命なら、俺はお前らを引き合わせたキューピッドってことになるな」


……青山が、キューピッド……。

ハート型の弓と矢を持って、くるくる飛んでる青山を想像したら……なんていうか、面白い。


「おいコラ、何笑ってんだよ。 ったく、俺は真剣に話してるっつーのに」

「ご、ごめん……でもなんか、面白くて……」

「あーもう笑うな!! ここからが大事なんだから、絶対笑うなよ!!」


私の頭をコツンと叩いた青山は、部屋のドアの辺りを見て言葉を続ける。


「結城は多分、啓介を選ぶと思う。
運命ってこと抜きでもさ、なんつーか、二人の波長っつーの? そういうのがピッタリ合ってる感じがする。
だから多分、お前は啓介を選ぶと思うんだ」