あたしと彼と白いキャンバス

「引っ越しを早めたいんだ。空気のいい場所なら、エリカの喘息も楽になる」

「ああ…うん」

「仕事をキリのいいところまで終わらせて、引継ぎもしないといけない。新しい家も決めないとな」

「……」



引っ越しを求めたのは、あたしだ。

逃げたくて。
終わらせたくて。


けれど志乃の気持ちを知った今では――。



「お待たせしましたー」


にこにこと愛想のいい店員さんが注文した品をテーブルに置く。

ふわんとコーヒーのいい匂い。


お父さんは早速カップに口をつけた。

あたしはケーキにフォークを刺す。