しばらくしてヤカンからシュウシュウと白い湯気が立ち、自分と先輩の分のココアを入れた。


「どうぞ」


テーブルの上にマグカップを置くと、篠宮先輩は顔を上げた。

目と目が合う。



ただそれだけのことで騒ぎ出す鼓動に、あたしは気づかないふりをする。


「…君はどうしてこんな絵が描ける?」


怯えながら探る、そんな声だ。


おかしい。

こんな先輩を見たことはない。


でも、これが先輩の『本当』なんだろうか?


「どういう意味、ですか?」


先輩の視線はまたキャンバスの上に戻った。