家族以外の人間が部屋に入るのははじめてのことだ。


「この辺に座っててください」

「…ああ」


テーブルの前に座った先輩を確認して、あたしはキッチンに立った。


温かい飲み物でも入れよう。

…確か先輩はコーヒーが嫌いだったはず。




ヤカンのお湯が湧くのを待つ間に先輩の様子を窺うと、

彼は自分のスケッチブックを投げ出してあたしのキャンバスを見ていた。


あの、白い絵の具の上に描いた禍々しくておかしな絵を。





静かだ。

青く透明な空気が先輩を包んでいるような気がする。