アネモネ*~風、君を愛す~



「そろそろ失礼するよ」


と、松井さんが母に告げる。


「タクシー呼びますね」


そっと松井さんに寄り添う母を見ると、

とても幸せそうに笑ってた。

こんな母の笑顔を随分と見ていなかったことに、

ハッとさせられた。

玄関先で松井さんを見送る。


「紗那ちゃん、沙良ちゃん、ヨシ君、今日は本当にありがとう。家に帰って息子たちに報告するよ」


「おやすみなさい」


松井さんと握手を交した。

大きくてゴツゴツした温かい手。

アタシはこの手を信じてみよう、

きっと幸せになれると実感した。