赤い塗装のミニカー。
そいつは大人しく陽菜の掌にちょこんと乗っている。
走ることに疲れてしまったのか。
走りたくないのか。
分からないけどエンジンが掛かる気配はないようだ。
俺は瞳を丸くしてそれを見つめる。
『…なに…これ?』
『なにってミニカーだよ?』
そんなくらい分かる。
俺が求めているのはそんなことじゃなくて、どうしてミニカーを俺に差し出すんだよ。
俺はミニカーから陽菜へと視線を変える。
陽菜はにっこりと笑ったまま、俺を見つめていた。
『なんで俺の前にこれを?』
眉間に皺を寄せて、理解に苦しんでいる様子を見せると陽菜はみるみるうちに沈んでいく表情へと変わっていく。
そしてワケの分からない言葉を口から零した。
『…赤色…嫌い?』
…なんでそうなるんだよ。
赤が好きとか嫌いとかじゃなくて、これは何だよ?


