どこまでも、蒼く



さっきの音で周りにいた人たちの視線が一気に陽菜へと集まる。
笑う人もあれば、心配そうな顔をしているのに助けない人もいる。


陽菜は慌てて自転車を一台ずつ起こしていく。


『…お前なにやってんの?』


俺は焦る陽菜の背中へと冷静に言葉を投げた。
俺の声に気がついた陽菜は自転車を持ちながら、顔だけ俺の方に向かせる。


『へへ。倒れちゃったみたい。』



倒れちゃったみたい…
じゃなくてお前のせいで倒れたんだろ?


『しょうがねぇから手伝ってやるよ。手伝い料、高いからな』



カバンを地面に置いて、ひとつひとつ自転車を直していく。
決して軽くはない自転車を、小柄な陽菜に全て直せというのは酷い仕打ちだ。


直している最中、《俺って意外とお人好し?》と自画自賛をしてみた。


…数分後、自転車は元通り、陽菜は達成感に溢れていた。


おいおい…
直したのはほとんど俺だけど…?