自転車が取れないのか、困った表情をして、自転車を必死に取り出そうとしている。
こういう場合、どうすればいいのだろう?
俺はすばるのようにお人好しな性格じゃないし、早く帰りたいと思っている。
陽菜を見て見ぬフリをして通り過ぎようとした。
『離してよぉ…』
こう言う陽菜の声が耳の中に入ってくる。
なんだよ、離してって。自転車に言っても意味ないだろ。
『アホだ。絶対』
小さく笑い、先を進む俺。
そんな時、背後からなにかが倒れる音がした。
なんだ?と思い後ろを振り返ると、そこには将棋倒しになった自転車があった。
さまざまな色の自転車は、綺麗に横倒しになっている。
そうしたのは…あいつ。
その無惨な自転車を見て、泣きそうな顔をしている。
『…まじかよ…』
どうすればそんなふうになるんだよ…。
仕方なく思った俺は、くるりと方向を変えて、陽菜を助けに行った。


