街の街灯は申し訳なさそうな程度に輝いていて、闇に包まれた色をしている夜空には、無造作に浮かんでいる月の姿がある。
今日は星が出ていない。別にどうってことないけど、なんだか寂しく感じる。
月が寂しそうで…、
俺は手を差しのばしてあげることさえ出来ない人間。
距離の問題ではない。
もちろんそれも理由に含まれるけど、自分の心に余裕がないからだ。
月を助けてやることが出来るなら、月より身近にある、萎れた雑草を助けてやることだって出来る。
でも夕方の出来事のように、俺は雑草にさえ気がつかなかった。
じゃあ何も出来ないじゃないか。
自分は自分の価値はなんなのか、そればかり考えている。
駅の繁華街より少し歩いたところに俺と慶汰が住んでいるマンションが建っている。
マンション全体がライトアップされていて、まるで高級マンションと訴えているよう。
こんな高い家賃のマンションに住みたかったわけじゃないのに。


