このまま、陽菜と付き合っていくのは無理な気がする。
陽菜は心を奪われたはずだから。
それに俺にはそんな力は残っていない。
陽菜の前で、心の底から笑えない気がするんだ。
『嵐…、自分に自信を持て。お前には出来るから…』
強く、着ている衣服を握る。
我慢出来ずに浮遊する感情を抑えているのだ。
出来ないよ。
出来るわけないよ…。
俺に入る場所なんてないはずだから。
憧れが好きに。
変わった瞬間をこの目で見てしまったのだから。
『…陽菜は慶汰のことを追ってここに来たんだよ…!!慶汰が陽菜のことを好きなら…幸せにしてあげてくれよ…』
慶汰の胸ぐらを掴み、涙目で見上げると、そこには変わらない優しい笑顔を見せる慶汰がいた。
この笑顔に何度安心しただろう。
『嵐…、俺…年明けたら仕事で名古屋に引っ越すんだ…』


