薄暗い廊下。
けどリビングが明るくて少しだけ光が漏れている。
リビングに入ると、ソファーに座り、テレビを見ている慶汰の姿があった。
かっこよく、ワインなんか飲んでいる。
けど表情は廊下のように暗かった。
『慶汰、お前どこにも行かねぇの?』
冷蔵庫からお茶を取り出して言う。
『行かないよ。予定ないし』
いつもより冷たい態度。なにかあったのか?
『ありさとデートかと思った』
去年も、一昨年も、慶汰はクリスマスになるとありさと二人で旅行に行っていた。
けど今年は、家にいる。なぜ?
ありさとのペアリングをはめていなかった慶汰の姿が頭をよぎる。
『あのさ…』
言いかけたときだった。
『俺、ありさとは別れたんだよ』
言おうとした言葉をお茶と一緒に飲み込む。
…今、なんて?


