ずっと探していたのに。自分の居場所と…
存在価値を…。
もし俺が慶汰より早く生まれていたら、こんなにも苦しい思いはしなかっただろうか?
いや、そうとは限らない。
慶汰はきっと活躍をするだろうから。
『嵐?嵐?』
目の前で陽菜の小さな手が往復をする。
それに我に返った俺は、握っていた拳から力を緩めていく。
そして冷静さを取り戻すのだ。
『それ、買うの?写真集はいいのかよ?』
『写真集はまた来月にする。またその時に探すよ!今日はこれ買ってくるね!』
ずっと探していたものより、陽菜はそれを買うんだね─…
尊敬より憧れを選んだんだね…。
そう思うとまた苦しくなる。
息が出来ない。
本の圧迫感のせいだろうか?
レジで精算する陽菜が、陽菜の後ろ姿が…
俺の居場所を分からなくする。
けど愛しいと思ってしまう俺もいる。
この日、初めて空が曇ったんだ…。


