どこまでも、蒼く



目玉焼きは醤油派。
これだけは譲れない。
慶汰はソース派らしいけれど。

昔それで大喧嘩をした覚えがある。


慶汰は俺の目の前に座り、やはりソースを手に取る。
もう喧嘩することさえめんどくさくなった俺は何も言わないけど。



『嵐、お前聞いてんのかよ?』


『あ?ああ…進路ね。
俺言ってなかったっけ?』


『聞いてねぇから!』



言った覚えがあるのは俺だけだろうか?
もう分からなくなってきた。


俺は真っ白な温かい牛乳を一口飲んで、慶汰に視線を向ける。



『俺、美大行くから』



響き渡る言葉。
その言葉は部屋全体に広がる。
跳ね返り、俺の耳にまで入ってくる。


慶汰にも聞こえただろう。
けど慶汰はなにも言わない。
それに驚いた表情も見せない。



『聞いてんの?』



俺がこう言うと慶汰は箸を置いて、安心したような表情を見せた。