耳に入ってくる波の音。これはあずきで作った偽物の波の音ではない。
本物の波だ─…。
瞳を閉じて、波の音を聞いていると、頭の中に海の風景が広がる。
なんだろう…
この癒される感じ。
今まで溜まってきたストレスがひとつ、ひとつ消されていく感じ。
体全体で海を感じていた。
きっと陽菜もだよね。
瞳を開けると、隣では瞳を閉じた陽菜がいる。
陽菜も体全体で海を感じていた。
『…この音、ずっと聞いていたいね…』
俺たちは改札を出て、海へと向かっていく。
夕日が俺たちを迎え入れる…。
『そうだね。そうだ!じゃあ結婚したら海の近くに住めばいいじゃん!』
『うん!そしたらずっと波の音が聞けるね!』
俺は約束なんて守れる自信なんてなかったけど、お前と交わした約束は絶対守りたいんだ。
お前はこのときの約束を覚えていますか?


