俺の部屋の窓辺に置かれたてるてる坊主。
ありがとうな。
ちゃんと役目を果たしてくれて…。
海までは電車で三時間弱かかる。
着いたころはきっと夕方だろう。
俺たちは手をぎゅっと握りしめたまま、肩を寄り添って、電車が海に着くのを待った。
そして、時間は経つ。
『…嵐、嵐…』
瞳を閉じていた俺は、陽菜の呼ぶ声でゆっくりと瞳を開けて、辺りを見渡す。
『ん?なに?』
『…海…』
陽菜が指差す方向には、太陽の光で反射する海が広がっていた。
俺は感動で言葉が詰まってしまう。
海を見るのはいつぶりだろう?
もうずっと見ていない気がする。
毎日、人で出来た海なら見ているけれど、本物の海は、テレビ越しでしか見たことがない気がする。
次第に胸が疼き出す。
そして俺たちは仲良く手を繋いで、最寄り駅に降りた。


