海までは、乗り換えなどしなくてもいい。
一番近場の海へと向かうのだ。
陽菜は綺麗さより、ただ見たいだけらしい。
俺も海は嫌いじゃないから、嫌な思いはしないけど。
『楽しみ、ね?嵐』
陽菜が俺を見上げて、満面の笑みを見せてきた。俺は『そうだね』と返事を返すと、陽菜は視線を下に落として、首からぶら下がっているカメラを、まるで猫を撫でるように、優しく触った。
『晴れて良かった…』
笑みを零す陽菜を見ると、胸が苦しくなる。
これは幸せという証なんだ。
実は、陽菜には内緒にしてあるのだけど、昨日の夜、俺はティッシュでてるてる坊主を作って窓辺に置いていたんだ。
このことを陽菜に言えなくて…
だって、恥ずかしいじゃん。
張り切りすぎ…なんて笑われたら、俺は顔を真っ赤にして小さくなるに決まっているから。


