すると陽菜は急に黙りだして、足元に視線を落とし、なにかを考え始めた。
俺は空を見上げて、息を吐く。
吐いた息は白くなり、空へと立ち上っていった。
春がきたら、お前は俺の隣にはいないのかな?
思いたくなくても考えてしまう。
嫌だな…。
『…陽菜?』
俺は足を止めて、急に止まりだして立ちすくむ陽菜の方に顔を傾けた。
『嵐、陽菜…』
この時、お前がこのことを言わなかったら、俺はあの場所と出逢っていなかったかもしれない。
あの光り輝く、海辺を、知ることはなかっただろう─…。
『ん?なに?』
『陽菜、海に行きたい』
まさか、こんなことを言うなんて思わなかった。それもそうだろう。
今は冬だぞ?
海なんて季節外れすぎる。
『海?今の時期なんて汚いと思うけど?』
『汚くてもいいんです。嵐と行ければ、それで…』
俺は忘れないよ。
お前が教えてくれた、
空と海の関係を─…。


