それは…人間だから。
生きている証じゃねぇか。
なにを恥ずかしがる?
大丈夫。
みんな同じ経験をするのだから。
『…嵐…あなたは陽菜を緊張させるのが得意ですね…』
突然口を開けた陽菜。
陽菜から飛び出した《緊張》という言葉が耳の中に残る。
なんだ、陽菜も緊張してたんだ。
『得意じゃ…ねぇよ。本当のこと言っただけ。
陽菜の気持ち聞かせてよ』
うん、そう。
俺は本当のことを言っただけだ。
偽りの言葉なんかじゃないよ。
だからお前の気持ち聞かせてよ…。
耳障りなくらいうるさい心臓の音。
これは俺の心臓?
陽菜の心臓?
どくん…。
もし陽菜の心臓の音だったら、同じ音をしているね。
『あの、これ…』
すると陽菜は手に握っていたあるものを俺に見せてくる。
ぐしゃぐしゃになった紙切れ一枚。
そこには、細い線で描かれた、グラウンドの風景。
これは、俺が描いた絵だ。


