『陽菜…聞きたいことあるんだけど…。陽菜が転校してきた理由って慶汰が関係してんの?』
俺が《慶汰》という名前を口にすると、陽菜は一眼レフのカメラを抱え込むようにぎゅっと握って、下を向いた。
やっぱり何か関係があるようだね。
そんな陽菜を見た俺は少しだけ悲しくなった。
『陽菜、昔慶汰に助けられたんです…』
突然何の前触れもなく話し始める陽菜に、俺は戸惑いを隠せないでいた。
そしてその言葉に疑問を持つ。
助けられた?慶汰に?
『どういう…意味?』
『陽菜、ずっと前カメラを持って東京に一人旅に出かけたんです。その時、道に迷ってたら、慶汰が声をかけてくれたんです。最初は慶汰だって分からなかったけど、付き添いの人が《撮影に遅れる》って言ってたから…』
忘れていた。
慶汰の性格を。
あいつはお人好しなんだ。


